辻惟雄氏が『ギョッとする江戸の絵画』(2010.01.15 羽島書店)の冒頭で、「芸術の効能は人をギョッとさせるところにある」と述べています。蕭白の作品には、観る人をして「おや、これは何だろう」「いったいどうなってるんだろう」と思わせるところがあります。まさに意図的にギョッとさせる蕭白のねらいがあるのです。それを『蕭白のいたずら』であるとするなら、それを見つける楽しみ、それも蕭白の作品を観るひとつの見方なのだと言えるでしょう。

布袋図

布袋図

布袋図∼布袋様をひっくり返して

パッと見て 何が描かれているのか分からず、説明を聞いてその絵を見た人は、必ず笑みを浮かべるのです。それこそ蕭白のねらい、いたづらなのでしょう。

はげた頭を真上から見ると、目と鼻はこんなに見えるのですね。大きなお腹に足を上にあげ、背中に背負った大きな袋のために起き上がれない布袋様。その滑稽な姿がユーモラスに描か

布袋図~頭・顔

布袋図~頭・顔

れた作品です。きっとお酒を飲んでほろ酔い気分のときに書いたのでしょうか。その出来栄えに満足した蕭白は『袋よりすべるや琴のつまはずれ』と讃を入れたのでしょう。