今年は十二支の6番目の蛇年です。蛇のご利益、蛇とかかわりある弁財天についてお話します。
もともと日本には、縄文時代の地層から「蛇を頭に巻き付けた女性」を象った土偶が発見されているように、蛇に対する信仰は古くからありました。水田稲作を中心とする日本の農耕においては、農耕神は水神ととても密接な関係にあります。蛇は、湿地を好んで生息する習性にもとづき、水神の使い、もしくは水神そのものと考えられるようになりました。
一方、弁財天の起源は、古代インドのヒンドゥー教に由来します。ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティーが仏教に取り込まれることで弁才天となり、さらに日本では神仏習合の中で神道と融合することで、ある意味で特殊な進化を遂げました。元来、サラスヴァティーとはサンスクリット語で「川」の意味を、女神サラスヴァティーは川の神だったのです。そこから解釈が拡張され、川のように流れゆく「言葉」や「音楽」の女神となり、やがて学問や芸能の神、つまり「才」の神となりました。
蛇神と弁財天、共通するのは共に水。農耕民族にあって、水は収穫に関わり、財や福徳をもたらす源です。蛇を頭に頂く弁財天があるように、奈良時代になると、仏教の守護神である弁才天の信仰と混じり合い、さらに中世以後は、穀物や福徳をもたらす蛇神の宇賀神(うがじん)と同一視され、財宝神としての信仰を集めるようになりました。
また、蛇の脱皮をして大きくなっていく様が復活と再生を連想させるため、不老長寿や強い生命力の願いを持つ人は、縁起物として蛇を大切にしてきました。さらに、蛇は執念深いと言われますが、それは自分が受けた恩に関しても発揮されます。そのため、受けた恩は絶対に忘れない、義理堅い性質であると言い換えることもできます。
『蛇の足より人の足見よ(へびのあしより ひとのあしみよ)』
蛇に足があるかどうかを論じるのは無益で、自分の足元のこと(身近なこと)を考えたほうがよいということ