朝田地蔵会式
8月16日、午前5時。朝田寺の地蔵盆が始まります。
天井いっぱいに掛かる衣類は、今年初盆を迎える方が身につけていたものです。道明供養(葬儀が終わった後、朝田寺の地蔵菩薩に故人の極楽浄土を願い、故人の衣類を1着持って供養に訪れる)の際に掛けた衣類です。
初盆の供養の他に、3回忌の供養やご先祖の供養に訪れる方々のお参りが、8月23日まで続きます。
8月23日、午後10時。盆踊り・採灯護摩・火渡り・打ち上げ花火等の行事がすべて終わり、夜店もたたまれて、境内に静けさが戻ります。一方、本堂の内陣・外陣は、故人の衣類を焼いて最後の供養をしようというご遺族の方でいっぱいになります。
午後10時30分、衣類を焼きにいらした方が志す故人の法名を読んで最後の供養をした後、本尊の地蔵菩薩の厨子の戸帳(幕)を下ろし、厨子の扉を閉める『閉帳の儀』が行われます。静かになった堂内に、7人の僧が唱える願文(がんもん。お地蔵様を讃える文句)が響き、戸帳が静かに下りていきます。
閉帳が終わると、故人の衣類が下ろされます。天井いっぱいの衣類の中から一人の衣類を探すのに、あれでもない・これでもないと係の者が困っている風景は毎年のことながら、何とか探した衣類を胸に抱いてお炊き上げの場所にいらっしゃる姿を見るにつけ、「お会いできてよかった」と声をかけてあげたい気持ちになります。
空に渦を巻くように高く上がる炎は、故人を一気に極楽浄土へと運んでくれるのか。ご遺族の方々が見つめる目は、みんなそう願って炎を見つめています。私は最後に「皆さま方は、亡くなられた方のご供養を十分されたのですから、どうぞ明日からは、ご自分の道を歩んで下さい。故人も、きっと皆様方のお元気な姿を望んでいらっしゃると思います」と結ぶことにしています。朝田寺道明供養掛衣(9月)
9月の天井は、がらんとして、折り上げの合天井が見え、前の法に来年初盆を迎える方の衣類が掛かっています。朝田寺の1年の始まりです。