牡丹のはなし ~ 朝田寺住職の手記 ~
この記事は、過去に先代住職、榎本義穰が記したコラムを再編集したものです。
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朝田寺は「花のお寺」としても愛されてきました。時代とともに見られる花は変わってきていますが、今でも見頃になるとたくさんの方々が当寺を訪れます。
「牡丹」は元々、当寺の代名詞とも言える花でしたが、近年の温暖化に伴う猛暑の影響で育成を継続することが難しくなってしまいました。ここでは朝田寺で育ててきた牡丹の記録を記します。
なお、現在は蓮や紫陽花が朝田寺の庭園を彩っています。そちらにも足をお運びいただければ幸いです。
牡丹園
朝田寺の2000㎡の庭園には500株30余種の牡丹が植えられていました。通例としては4月中旬に咲き始め、5月になると咲き終わりますが、気候によってある程度見頃に幅が出ます。
連鶴と白雁


「連鶴」は白の花芯に黄色のおしべ、「白雁」は赤紫の花芯に黄色のおしべが特徴です。
島錦

赤と薄いピンク、ピンクと白など、花弁に2種類の色があらわれるのが面白い「島錦」。 うまく色がでないと、赤い花弁の花で終わってしまいます。多くの方に人気の品種です。
柴紅殿

少しピンクがかった赤色の牡丹で、花弁の赤い筋が特徴的な「柴紅殿」。 太陽・芳紀・島錦等、赤系の牡丹の中では、やや遅く咲き始める牡丹です。
八千代椿

「八千代椿」は、花は小振りですが、透き通ったようなピンクが最高にきれいな牡丹です。
大藤

「大藤」は紫色系の牡丹で花弁の基部は色が濃く、ややぼかしの入った優しい紫色です。
八束獅子

直径が30㎝もあるようなうすいピンクの大輪を誇る「八束獅子(ヤツカジシ)」 。「花競」という品種によく似ています。
新七福神

中央部が濃くて、少し朱色がかったピンクが綺麗な「新七福神」。
初烏

「初烏」はいわゆる黒牡丹。赤黒い花ですが、日一日一日と黒っぽくなっていきます。
ハイヌーン

西洋系というのか、花弁が厚い黄色の「ハイヌーン」。 黄色が咲き始めると、牡丹の時期もそろそろ終わりになります。

光福山延命院朝田寺 住職 /高橋義海
光福山延命院朝田寺 名誉住職 /榎本義譲
「朝田寺」は、三重県松阪市朝田町にあり、四方を水田に囲まれた歴史と文化と花の田舎寺です。地元では、朝田の地蔵さんと呼ばれて親しまれております。また、江戸時代中期の絵師「曽我蕭白」の作品等の文化財も所蔵、公開しております。